我慢をやめる生き方へ

我慢することをやめ、やりたくないことはやらない生き方を貫いていきたいと思います。

書評その42 セックスと障害者 坂爪真吾著

一般社団法人ホワイトハンズを立ち上げ、障害者の性的介助の支援をしてきた著者が、障害者の性や恋愛についていろいろな角度から取り上げていました。読み易かったです。障害者の性に関する入門書として最適だと思いました。

 

健常者でも恋愛やセックスには苦労が付きまといますが、障害者はなおさらだと思いました。

しかし、性の分野に関する公的な支援や性的セーフティーネットは全くなく、障害者の自助努力だけに任されてきました。しかし、自助努力だけではどうにもならず結局我慢するしかないのが現状です。

いろいろな障害を乗り越えて恋愛やセックスや結婚もしている障害者がたくさんいる一方で、多くの障害者が恋愛・セックス・結婚を我慢してきた事が分かりました。

健常者にも勝ち組と負け組があるように、障害者でも健常者以上に若い頃からたくさんの恋愛やセックスを経験している人がいる事も分かりました。

全体として感じたのは、恋愛・結婚・セックスという物はハイレベルなコミュニケーションスキルが必要なので、身体障害者よりも知的・精神障害者の方が不利だという点でした。たとえ重度の身体障害者でも、コミュニケーション能力や魅力があれば恋愛・結婚・セックスまで辿り着けた事例がありましたが、コミュニケーション能力が低い場合や、行動力や自己肯定感などが欠如している知的・精神障害者は性的人権からは最も遠い存在だと思いました。

 

 

以下は印象に残った言葉です。

・恋人を作るために必要な条件は、障害の有無を問わず、「地域社会のコミュニティに積極的に参加する事」です。旅行やレジャーなどの趣味の集まり、障害者スポーツや地域のボランティアサークル、障害者運動に関する勉強会など。就労継続支援を行っているセンターや職場もこうしたコミュニティの一つに含まれる。

・地域社会のコミュニティへの積極的な参加を通して(ステップ1)、多くの人と出会って交流を深め(ステップ2)、その中で相性や価値観の合う相手と一対一の関係を作っていく(ステップ3)、という形が理想です。

・しかし、障害のある人(特に男性の場合)は、こうしたステップを飛ばして、出会ってすぐに相手に告白してしまったり、現実世界のコミュニティに参加せずに、いきなりオンラインの出会い系サイトなどで恋人を探してしまったりする、といった間違いを犯してしまいがちです。

・射精介助の現場を映したドキュメンタリー動画「障がい者の性ーMedical Sex Worker」…450万回以上再生されている。

・「電気消してくれない? 女性障害者が感じる性交渉での悩み事」…25万PV

・セルフスティグマ(自分への偏見や恥)を緩和するためには、同じ当事者によるエンパワーメント(力を付ける事、権限を持たせること、自信を与える事)が有効です。

・ダブルマイノリティであることを認識・受容するためには、同じ境遇の当事者が集う交流の場に参加して、他人を鏡にして自分を見つめ直す必要があります。