我慢をやめる生き方へ

我慢することをやめ、やりたくないことはやらない生き方を貫いていきたいと思います。

書評その43 孤独とセックス 坂爪真吾著

今でこそ性問題の第一人者として活躍中の著者ですが、高校時代は学校で誰とも話さないという暗黒の時代を通過していらっしゃったんですね。

この本では、著者の地獄の高校時代の様子が赤裸々に述べられていました。友達も彼女もいない孤独の苦しみが描かれていました。

この本は、18歳の男子11人が著者に性にまつわるいろいろな質問をぶつけて、それに対して著者が答えて行くという内容でした。

読んでいて思ったのは、若い頃は特に性に関していろいろな問題で悩むのに、それに対する教育や支援が一切ないという異常さです。学校では何の役にも立たないようなつまらない科目ばかり教えて、どうしたら友達や彼女を作れるかというもっと重要な科目が抜け落ちていると思いました。

今の社会は本当に個人個人が一人で悩みを抱えて苦しむような状況が本当に多いなと思いました。彼女ができない苦しみを抱えた高校生も一人で悩んでいるし、シングルマザーも一人で悩みを抱えて苦しんでいる…

どこからどう手を付けたらいいかも分からないほど問題だらけの社会に対して、著者は、ただ批判の声を上げていても社会は1ミリも変わらないと言います。そしてNPO非営利団体)に参加してみようと説いています。これにはなるほどと思いました。そこに参加すれば、同じ苦しみを抱えた人や似たような価値観を持つ同志と出会えたり、期せずしてコミュニケーション能力の向上も後から付いてくるように思いました。

自分と分かり合える人はいないと決め付けずに、分かり合える人はどこかに必ずいると信じて探し続ける事ができるかどうか、そこかな…と思いました。

  

印象に残った言葉

・現在、私自身が抱き続けている問いは、21歳の時に閃いた「性産業の社会化を実現するためには、どのようなソーシャル・デザイン(=望ましい社会を築いていくためのビジョンとプラン、そして実践活動)が必要になるのか」という問いです。

・これまでは夜の世界だけで活用されてきたその魔力(性)を、社会学的な理論枠組みを使って、どうにか社会性のある形、昼の世界でも市民権を得られるようなサービスや商品に加工・制御した上で、解き放つことはできないだろうか。仮にそれが実現できれば、極めて大きな社会的意義があるし、自分を含めて多くの人が楽になったり救われたりするはずだ。

・新しい「性の公共」を作る、というミッションを掲げて非営利組織を立ち上げた。

・男性が性的な孤独から抜け出すためには、三つの欲求を満たす必要があります。

1つ目は性欲。射精によって満たされる、即物的な欲求です。2つ目は性交欲。気持ちの通った相手とのセックスによって満たされる欲求です。3つ目は関係欲。好きな相手との会話や恋愛によって満たされる欲求です。こうした性欲、性交欲、関係欲の3つを同時に満たす事のできるサービスは、残念ながら今の社会には存在しません。

・純粋に「男」として自己開示できる場は、良くも悪くも水(商売)と風(俗)の世界しかありません。道徳的な縛りや政治的な正しさから解放されて、自分の欲望を素直に吐き出せる場所も、他にはありません。そのため、それらを自己開示のための場、心身の癒しを得るための場として活用する事自体は、決して悪ではありません。他者の前で自己開示をする経験を通して、自分の中の毒や怨念、コンプレックスを吐き出す事で、ようやく他者と健全に付き合うためのスタートラインに立つ事ができるのだとすれば、自己開示できる場を持つ事は、孤独から脱出するための第一歩だと言えます。

・自己開示の次に必要なのは、他者とコミュニケーションを取る経験を積む事です。今の社会には、恋愛やセックスを事前に学習する場、及び練習する場がありません。そのためのトレーニング・ジムとして、夜の世界を活用すべきです。夜の世界には女性との会話力を磨くコースから、女性の身体を詳しく知るためのコースまで、多種多様なメニューが用意されています。

・孤独から生み出された義憤を、社会性のある形へと昇華させるためには、一体どうすればいいのでしょうか。答えは簡単。「NPOに参加すること」です。