書評その143 逝きし世の面影 渡辺京二著
600ページもある大変長い本で、正直読むのが大変でした。著者の書く日本語が格調高い文学的な表現が多いというのも読むのが大変だったことの一つです。
そういった読みにくさを乗り越えてでも読みたかったので読み通しました。それほど重要な内容が書かれていると思ったからです。
内容は一言で言うと、江戸時代の庶民の暮らしです。
幕末から明治の初期にかけて日本を訪れたヨーロッパ人の記録を丹念に読み解き、江戸時代が一体どんな時代だったのかが克明に解き明かされていました。
今まで江戸時代というと、貧しい時代とか士農工商の差別が激しかったとか、悪い時代だったと教育されてきました。それは主に学校の社会科の時間であったり、テレビドラマや時代劇、歴史小説などでした。
けれども、今まで受けてきて歴史教育が根底から覆るほどの内容がこの本には書かれていました。
江戸時代は一言で言うと、庶民の楽園でした。現代社会のような苦しく辛い長時間労働などはなく、庶民の間に余裕と笑いが満ちていた社会だったのです。
今まで受けてきた歴史教育は一体何だったんだと思いましたね。
600ページですから分量だけでも普通の本の3冊分ありますし、密度の濃さから言っても普通の本の2倍程度ありますからこの本1冊で6冊分の価値があると思います。