書評その111 「ひきこもり」救出マニュアル 理論編 斎藤環著
2002年に出版された本を「理論編」と「実践編」の2冊に分けて、2014年に文庫本として出版された本でした。
2002年に書いた内容であっても、2014年の時点でも十分に通用する内容だったこともあり、ほとんど加筆修正をしなかったそうです。
「理論編」となっていますが、最初から最後まで質問と答え形式になっていて、僕としては非常に実践的な答えをもらえたと思います。「実践編」はこれ以上実践的なのだとしたら凄いと思いますが、もともと1冊の本だったので同じような感じなのだろうと思います。
ひきこもりの支援機関は医者、保健所、民間団体、カウンセラーなどたくさんあってどれがいいのか分かりません。人によりけりなんだと思います。
著者は医者であるので、やはり医者に繋がるのが一番お勧めだとしていました。
確かに医者に掛かるのであれば健康保険が使えますから通い続けるとなると経済的には一番合理的だと思いました。
ひきこもりぐらいで精神科に行くなんて大袈裟だなぁと思っていましたが、たくさんの質問と回答を読んでいる内に、確かに何年も何十年も困り、悩み、苦しむのであれば思い切って精神科という選択肢も大いにありだなと思いました。
僕が一番参考になったのはセカンドオピニオン(他の医師の意見)に対する考え方でした。
親身になってお世話してくれている精神科医に対してセカンドオピニオンを求めるのは、その精神科医のプライドを傷付け、宣戦布告することになるのではないかという怖れや不安がありました。精神科医と波風立てたくないという思いがあったんです。
しかし、セカンドオピニオンを求めることは2002年の時点でもはや一般的な権利となっており、失礼なことでもないし医者を愚弄する事にはならないんだなと思いました。
同じ医者に掛かり続けて何年も状況が改善しないならセカンドオピニオンを求めたり、他の病院を紹介してもらったり、自分でもっといい病院を探してみるのもいいなと思いました。
薬物療法についても参考になりました。
ひきこもりに効く薬はないそうです。
けれど、うつ病の薬で意欲が高まったりして行動できるようになった事例もあるようで、薬を毛嫌いするのではなく試してみるのもアリかなとは思いました。
薬を使わないとなると他にはもうカウンセリングなどの精神療法しかなさそうですが、カウンセリングを受けても何年間も何十年間も状況が好転しないこともあるのでカウンセリングだけを神聖視してもいけないんだなと思いました。