書評その97 ひきこもる心のケア―ひきこもり経験者が聞く10のインタビュー 村澤和多里監修、杉本賢治編集
元ひきこもり経験者で今も「ひきこもり臭」を残していらっしゃる杉本賢治さんが、ひきこもりの支援者や研究者10人にインタビューした本でした。
186ページほどしかなかったにもかかわらず、内容が濃くて読むのに時間が掛かりました。
内容が濃かったというのは、単にひきこもりの支援について質問しただけではなく、支援者10人の人生そのものが凝縮されているように感じたからです。
あと10人の人選が秀逸だったと思います。
誰一人としてひきこもりを責めるような話がありませんでした。
ひきこもりは普段、親やマスコミや社会から間断なく責められ続けていますが、この本に出てくる支援者(精神科医や大学教授等)はみんなひきこもりの味方だったので嬉しかったですね。
これだけの専門家たちがひきこもりに的確な支援をしているのにもかかわらず、政府の作る政策はいつも「働け。納税しろ」だけなのは本当にどうなってるんでしょうね。そういう思いが湧いてきました。
今までのひきこもり政策はいかにひきこもりの能力を引き上げるかばかりに焦点が合わせられていたと思います。つまりひきこもり本人にすべての責任を被せていたように思います。
しかしこの本の良かったところは、本人だけに責任を被せるのではなく、社会の構造の方にも問題があるのではないかという話が多くの識者から出てきていたところです。
今の社会構造を続けて行く限り、ひきこもりは増え続けるという話にはまさにその通りだと思いました。