書評その96 改訂版 社会的ひきこもり 斎藤環著
1998年に出版された「社会的ひきこもり 終わらない思春期」の改訂版が2020年2月に出ました。
改訂版を出すに当たり著者がもう一度読み返したところ、二十年前に書いた本にもかかわらず、修正点が少ししかなかったと言うほど完成度の高い本だったそうです。
僕が読んでみてもこの本は凄い…と思いました。物凄い完成度だと思いました。著者自身、出し惜しみなくすべてを出し尽くしたと書いてらっしゃいましたが、全くその通りだと思いました。
まず、「ひきこもり」を著者以外の他の医者がどのように診断しているか、というのも興味がありましたが、そのアンケートもありました。
それによると、
診断的にどのように考えるか?
・従来の診断分類でも診断できるが、必ずしも十分ではない…57%
・何らかの形で新たな診断分類を必要とする…22%
ひきこもりにもっとも該当すると思われる診断名は?
・回避性人格障害…36%
・随伴する症状によって診断する…25%
・退却神経症…23%
著者も臨床場面では随伴する症状(対人恐怖症、強迫神経症など)によって診断することが多いそうです。
治療法としては、アルコール依存症患者に対するような形で、薬物療法よりは周りの人間環境を整えて行く方法が一番効果的らしいです。つまり、ひきこもりの場合は同居する家族、特に本人の両親が精神科医とつながることが一番効果的だそうです。
親がひきこもりの子どもにお金をどのように与えるか、与えないのか、という事にも触れられていたのはビックリしました。
著者お勧めの方法は、
1、小遣いは十分に与える。
2、金額は必ず一定にする。
3、その額については本人と相談して決める。
本人と相談してとんでもない高額に決定したという事例は著者の記憶にはないそうです。つまり、本人は遠慮して少額でいいという場合が多く、欲しいときに欲しいだけ渡す方式の方が高額になってしまうそうです。
この本は机上の空論的な話がなく、本当に実践的なリアリティに満ちた提案がたくさんありました。ひきこもり本人だけでなく、家族にも大きな指針になると思います。ひきこもり関係者全員にお勧めします。
そういえば、日本はホームレスが少なくてひきこもりが多く、外国はひきこもりが少なくてホームレスが多いという話がありました。
つまり、日本のひきこもりと外国のホームレスは似ている部分が多いんだと思いました。
そういった意味でホームレス関係者にもこの本は大いに参考になると思います。