書評その120 僕たちはもう働かなくていい 堀江貴文著
AI(人工知能)やロボットの発達によって、僕たちはもう働かなくていい、という主張が書いてある本でした。
AIやロボットの発達によって人間の職が奪われるから、AIは発達させないほうがいいという意見もありますが、世の中の流れはもう止めることができないそうです。
もはや、好むと好まざるとに関わらず人類はAIやロボットの発達を受け入れるしかないようですね。
この本は2018年の終わりごろに執筆され、2019年2月に出版されましたが、その頃までのAI業界の様子が分かり易くまとめられていました。
著者はAIの発達によって面倒な仕事は機械がやってくれるようになるので、人間は好きなことだけしていればいい、遊んでいるだけでいいと主張していました。
確かにそうなったら嬉しいですね。
でも僕は読んでいて著者ほどには楽観的にはなれませんでした。
著者は面倒な仕事がどんどんなくなる点だけに注目されていましたが、それは光の部分だけで闇の部分もあると思いました。
確かに機械に取って代われらる職種は増えていきますが、それと同時に今までになかった仕事がどんどんできてくるように思います。
パソコンがなかった時代にはシステムエンジニアとかプログラマーという仕事がなかったように。
だからAIの発達によって人間が働かなくて済むようになるとは思えませんでした。
むしろ機械の発達によって人間の労働時間はどんどん増えているように思います。
人間の労働時間が一番短かったのは狩猟採集時代らしいじゃないですか。
それが農耕の始まりによって急激に労働時間が増え、産業革命によってもっと労働時間が増え、情報革命によってもっと労働時間が増えたように思います。
今の時代、もっとも労働時間が長いのがIT業界じゃないですか。
今もIT業界は慢性的な人手不足ですよね。
あと、著者はこれからは働かなくていい時代になるので、そのためにベーシックインカムが必要になるし、ベーシックインカムに賛成していました。
僕もベーシックインカムはありがたいと思いました。
でもその設計には細心の注意を払う必要を感じています。
ベーシックインカムが継続すればいいと思いますが、今の支配者層は継続するつもりがないという話を聞いた事があります。
甘い話を掲げてベーシックインカムを導入し、それと引き換えにすべての福祉政策を廃止します。そして数年たった後、「財源がなくなりましたので無理になりました」ということで、ベーシックインカムを廃止します。
この手法でベーシックインカムも、年金や健康保険などの今までのすべての福祉政策も廃止できます。支配者層にとってはすべての福祉政策を廃止するのが目的で、ベーシックインカムはあくまでのその撒き餌に過ぎないのです。
だから僕はベーシックインカムは眉唾ものだと感じています。
(今の年金の手法とよく似ていますよね。どんどん支給開始年齢が引き上げられているじゃないですか。支給開始が80歳まで引き上げられるのは時間の問題だと思いますね。納付だけさせて支給はしたくないというのが支配者層の本音だと感じます。)
あと、AIやロボットの発達で農業が自動化するので食糧は無料になると書いてありました。
本当にそうだとありがたいのですが…
今でさえ食料は余っているというじゃないですか…
それなのに多くの日本人が食費を切り詰めてカツカツの生活をしています。餓死する人もいます。
そこを著者は見落としていると感じました。
いくら食料が大量生産されようともそれが貧困層までしっかりと行き届くかどうかは別問題だと思いました。
それにアメリカや中国では今でもロボットで小麦やトウモロコシを大量生産しているそうですが、その小麦やトウモロコシの質についての言及がありませんでした。
遺伝子組み換え、農薬、化学肥料などが人体に及ぼす影響が本当にないのでしょうか。
近年の成人病やアレルギーの急増の原因は何なのか、食事にその秘密があるように思うのですが…
この本はAI革命の光の部分の説明はよくできていると思いましたが、闇の部分についての言及がありませんでした。
情報革命の申し子である著者ですから、そうなってしまうのも無理はないのかもしれません。
確かに情報革命によって生活は便利になりましたが、格差、ホームレス、精神病患者、自殺者、環境破壊、内臓破壊、神経破壊、労働時間増加などが加速しています。
僕はこの本を読んで勉強にはなりましたが、希望は感じませんでした。