書評その57 うしろめたさの人類学 松村圭一郎著
この本の内容を一言で言うと、エチオピアと日本の文化の比較でした。
題名の「うしろめたさ」の意味は、著者がエチオピアの人達よりも不当に豊かな生活を享受している事や、経済的な格差に対して感じている事を表しています。
著者がエチオピアの村に行き、現地の人と交流して体験した見聞録は僕にとってはとても新鮮に感じられました。
日本ではお金による交換経済が主流ですが、エチオピアの村ではまだ贈与経済がかろうじて残っており、人の温かみが感じられました。
日本だけで暮らしていると日本の文化(欧米の文化)が当たり前に感じて何も疑問を感じなくなってきますが、エチオピアから日本を見ると日本の事が分かり易くなると思いました。
他にもエチオピアの人には名前がいくつかあって使い分けている話も興味深かったです。幼少期の名前も父親が呼ぶ呼び方、母親が呼ぶ呼び方、成人してからの名前、パスポート用の名前、イスラム教の国に行く時のイスラム的な名前等々、いくつもあるようです。日本よりも自由度が高い国だなと思いました。日本では名前は役所に届け出た名前だけですし。
一つ欠点を挙げると、エチオピア人との交流体験などの話は面白かったものの、著者の哲学的な思索は抽象的で難しく、読んでいて疲れました。
結局、エチオピア体験談の面白さよりも哲学的思索の苦痛さが上回り、半分ほど読んだところで断念しました。
日本は近年生き苦しさが増大し、精神を病む人が増えています。つまり、日本の文化が日本人に合わなくなってきたんだと思います。
生き苦しさを緩和するためにもエチオピアの文化を日本に取り入れた方がいいと思いまいした。