我慢をやめる生き方へ

我慢することをやめ、やりたくないことはやらない生き方を貫いていきたいと思います。

書評その47 子どもは親を選んで生まれてくる 池川明著

産科医・池川明さんの著書は心が楽になるから好きです。普通の妊娠・出産・育児本は義務や責任や禁止などについてばかり書かれており、そんなに大変ならもう子どもなんていらんわと思う事が多いですが、この本を読んで、大人にとっても子供を持つ事はメリットがある事なのかもしれないと思いました。

 

印象に残った言葉

・私たちは、生まれたばかりの赤ちゃんは大泣きするものと思い込んでいますが、赤ちゃんがその生まれ方や、医師、看護師、助産師の扱い方に満足しているなら、笑顔で生まれる可能性も十分あると思います。赤ちゃんが誕生した時に笑っているか、泣いて不満を訴えているかが、素晴らしい出産かどうかを判断する新しい基準になるのではないでしょうか。

・お産をするお母さんがアスリート、おばあちゃんはコーチです。周囲の人はさしずめ観客・応援団でしょう。さて、今まで跳んだ事のない高さに挑む棒高跳びの選手に、コーチはどうアドバイスするでしょうか。「大丈夫だ、あれだけ練習してきたじゃないか。お前なら十分に跳べる」と安心させて競技に送り出すでしょう。お産に向かうお母さんに「何かあったらどうするの?」と言う心配を口にする御婆ちゃんは、選手に向かって「お前大丈夫か?今まで跳んだ事ない高さだ。跳び越せなかったらどうするんだ」と言っているのに等しいのです。本当は「さんざん準備したのだから、大丈夫だ」と励ます方が良いのです。

・一般には胎教と言うと、モーツァルトを聞いたり、お腹に向かって絵本を読む事だと考えられています。それでお母さんの心が落ち着くなら素晴らしいですが、胎教の本質とは、必ずしもそういう具体的な事ではないでしょう。おそらく、お腹の赤ちゃんが最も望んでいるのは、お母さんが幸せを噛み締めながら、「あなたがいてくれて嬉しいな」と話しかけ、その存在を認めてもらう事ではないでしょうか。

・好きになれない親でも、自分で選んで生まれてきたのだと考えるなら、見方が変わって来るでしょう。嫌な親なら、なぜあえてその親を選んだのかを、じっくり考えて見てはどうでしょうか。親子関係は、お互いにとって最高の問題集です。どれほど難問であるにせよ、子どもは親を成長させるために生まれてきたのですから、何らかの意味ある関わりが持てるはずだという事に、自信を持って頂きたいのです。すると、厄介な親を選んだ自分を、誇らしくさえ思える事でしょう。そう認めると、不思議な事に、現実の親子関係も少しずつ変わっていくはずです。

・私は産後の検診もするので、お母さんから子育ての悩みを打ち明けられる事がありますが、トラブルの根本におばあちゃんとの問題があるケースがかなりあり、おばあちゃんに診察室に来て頂く事もあります。そんなとき、おばあちゃんたちが共通して語るのは、おばあちゃん自身が辛い子ども時代を過ごしてきたという事です。「娘がそんな風に感じていたなんて、思ってもいませんでした。娘には、私みたいな思いはさせたくないと思いながら育ててきたのに。私の人生は苦難の連続でした。親には「あんたなんて産まなければ良かった」って言われていました。結婚生活も大変で、子育ても苦しくて…」と語り始めるおばあちゃんもいます。

・お産に立ち会ったあるおばあちゃんは「お産は陣痛で辛いだけだと思っていましたが、こんないいお産ができるのですね。なんだか、私自身が娘を産み直したような気分です」と語ってくれました。お産のトラウマを抱えている御婆ちゃんは、娘が息むのを見て、自分がお産をしたように追体験し、涙を流します。するとお母さんも、おばあちゃんの涙を見て感動し、「私もこんな思いをして産んでもらったのだ」と感謝できるようになるのです。考えてみれば、おばあちゃんにどんなわだかまりがあるお母さんでも、赤ちゃんだった頃は、おばあちゃんを無条件に愛していたのです。