書評その37 貧困問題の新地平 ―もやいの相談活動の軌跡― 丸山里美編
ページ数は180ページほどと長くはなかったのですが、文体が論文のような感じで読みにくかったです。読んでて疲れました。大学の教科書を思い出しました。
内容を一言で言うと、NPO法人もやいが今まで生活困窮者の相談に乗ってきた時に記録してきた相談票を集計した分析です。
どういう人が何%いて、もやいに相談に来るまでにどんな所に住んでいてどんな仕事をしていたか等について書かれていました。
相談票の数が3000人分以上なので、男性、女性、若者、中高年、などの分類での傾向がよく分かりました。
これだけたくさんの事例を集計してあるのはもやい以外にはないのでこのデータはとても貴重だなと思いました。
本の最後にあった湯浅誠さんと仁平典弘さんとの対談は面白かったです。
読んでいてもやいがどれだけ頑張って来たかが分かると同時に、日本の公的支援の現状がよく分かりました。
印象に残ったのは、無料低額宿泊所に関する内容です。
無料低額宿泊所と言うのは、アパートを借りる前に住まなければならない事になっている施設の事です。
しかし、その施設の住環境があまりにも劣悪過ぎて脱走してしまう人が後を絶たないのです。どう劣悪かと言うと、一言で言えば汚いのです。
狭い部屋に大人数で住む事も多く、プライバシーや自由がほぼない環境です。野宿の方がまだマシだという事で脱走・失踪したまま生活保護の受給に至らない人がたくさんいます。水際作戦と同時にこの無料低額宿泊所の劣悪さも生活保護受給者数の削減に大きな役割を果たしていると思います。
「無料低額」であるならば質的に劣悪でもしょうがないと思いますが、実際は無料ではなく、品質から考えたらむしろ高額と言える宿泊所も多く、生活保護費のほとんどを取られてしまいます。
次に印象に残ったのは、女性です。もやいに相談に来る人はほとんど男性ですが、1割ほど女性もいます。
もやいに相談に来た人の内、男性は生活保護の申請へと繋がる人が多いのですが、女性の場合は家族や暴力など複雑な問題が絡まっており、生活保護の申請へと至るのが4割にも満たないというのは驚きでした。