日本はワールドカップで優勝する力があると思う。
ベルギーに本当に紙一重の僅差で負けてしまった。
でもプレー内容がベルギーよりも日本の方が良かったのと、相手は世界ランキング3位でブラジル、フランスに次ぐ優勝候補のベルギーなのであまり悔しさは感じなかった。
持てる力をほぼ全て出し切れた満足度や清々しさを感じた。
優勝候補のベルギーと互角の戦いをしたのだから日本には優勝する力があったんだと思った。
以前、本田選手がワールドカップで優勝を狙っていると言っているのを聞いて、何を夢みたいな事言ってるんだと心の中で白け切っていたが、本田選手の予告というか予言というか凄いなと思った。
でも、ワールドカップで優勝すると本田選手が言った時、心の中で白け切っていたのは私だけではなかったと思う。日本代表23人の中にも優勝までは難しいだろうなと思っていた選手はいたんじゃないかと思う。
一方で、ベルギー代表の選手達はほぼ全員が本気で優勝を目指していたんじゃないかと思った。
その情熱の本気度や強さが最後の最後のカウンターでの走力やパスの正確さや決定力に滲み出て来たように感じた。
最後、カウンターではデブライネの高速ドリブルやいつも通りの超精密で決定的なスルーパスも凄かったが、ルカクのスルーには衝撃を受けた。
センターフォワードとして点を取らないといけない重圧からエゴイスティックに無理な角度からシュートを打つ選手が多いが、彼は後ろから走り込んで来る味方を把握する広い視野と自分よりも技術的に劣る者に究極の決定的チャンスを譲る度量の広さを持っていた。
ルカクのこのプレーを見て、嗚呼、お前には負けたよ、と思った。
今回のベルギー代表が強いのはこのチーム内の一体感というか友情みたいな物があるからだと思う。
俺が点を取りたいとか俺が目立ちたいとかそういう思いを超えてこのチームで勝ち上がりたいと言う気持ちを感じる。
ベルギーはお国柄として北部オランダ語圏と南部フランス語圏で深刻な民族対立がある。
以前は代表チーム内でもフランス語圏の選手とオランダ語圏の選手でお昼ごはんを別々に食べていた事まであると言う。
今のベルギー代表にはチームメイトを深く信頼し合う雰囲気を感じる。
ルカクの最後の決定機でのスルーは、日本対セネガルで本田選手のシュートチャンスを作る為に犠牲的囮になった岡崎選手のプレーに通じる物を感じた。
個の能力で世界一のベルギーに日本のお家芸とも言えるチームプレーを最後の最後にやられてしまった。
この試合、日本側にもベルギー側にもラフプレーや薄汚いプレーが少なく選手達の精神性の高さを感じ、見ていてとても気持ちが良かった。
ボールを持った相手を複数人で囲む日本の組織的守備は今大会で世界最高峰だと感じた。1対1の個の能力で劣る日本が世界有数のプレーヤーであるアザールやルカク、メルテンスらにほとんど仕事らしい仕事をさせなかった。
最後の最後にハリルホジッチ前監督が目指していた「縦に速いサッカー」の究極形態である超高速カウンターを決められて負けたのには偶然とは思えない意味を感じる。
ハリルホジッチ前監督からはほとんど代表に招集されなかった乾選手が大活躍した今大会。もしハリルホジッチ前監督が続けていたら乾選手は代表に選ばれなかったかもしれない。
確かに世界の主流は守りを固めて高速カウンターという事なのかもしれない。
しかし私は香川、乾、柴崎選手のような創造性とアイデアに満ちたわくわくするパスを見ているのが好きだ。そしてそれは理想論まみれの絵空事ではなく、現実世界で世界トップにも通用する戦い方でもあると言う事が立証された。
サッカー日本代表はこれからどのように進んで行くのか、縦に速いサッカーと如何に向き合って行くのか、問われているような気がする。